今月の研究者

前田 明子

前田 明子

【キャリア】
私は平成13年筑波大学医学専門学群を卒業し、2年間の筑波大学附属病院内科研修を終えたのち、平成15年4月より東京大学医学部附属病院神経内科に入局しました。その後東京大学医学部付属病院、日本赤十字社医療センター、国立国際医療センターで臨床研修を行いました。平成18年から平成22年の4年間は東京大学大学院博士課程 医学系研究科 脳神経医学専攻にて神経内科第3研究室(末梢神経・筋病理の研究室)に所属しました。この間、自施設・他施設より依頼された筋生検および神経生検検体の顕微鏡的観察および診断を行うとともに、「炎症性筋疾患の筋病理所見と血清筋炎自己抗体の関連」をテーマとした研究を行いました。平成22年から6年間は虎の門病院本院神経内科で勤務し、平成27年4月より同院分院神経内科で勤務しております。同時に平成22年より東京大学医学部附属病院登録研究員として、平成28年より登録研究員として研究を継続しています。
平成25年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)(若手研究(B))「抗ミトコンドリア抗体陽性筋炎症例における心合併症に関する研究」を交付されました。
平成27年7月1日 公益財団法人冲中記念成人病研究所よりリサーチメンターを委嘱され、平成28年4月1日より公益財団法人冲中記念成人病研究所より研究助成金を贈呈されました。

【研究分野】
もともと自己免疫疾患に興味があり、末梢神経・筋病理の研究室の中でも診断需要の高い「炎症性筋疾患」を対象とした研究を行ってきました。
近年、炎症性筋疾患の筋病理所見の特徴が明らかになりつつあり、その病理所見の特徴の背景には各々異なる病態機序が存在すると考えられます。各々の病理所見の特徴によって、現在、炎症性筋疾患は現在、皮膚筋炎、多発筋炎、封入体筋炎、壊死性筋症、(膠原病合併筋炎)の4つ(または5つ)のグループに分類されています。しかし、これらのグループに分類されない「分類不能筋炎」の症例も多く存在し、炎症性筋疾患の病態機序に関しては不明な点が多く存在します。
一方で筋炎患者さんの血清において筋炎自己抗体(例:抗Jo-1抗体、抗SRP抗体など)と呼ばれる抗体が検出されることが知られており、その検出される抗体の種類ごとに筋炎以外に合併する症状、治療反応性や予後が異なることが明らかになってきています。
私の研究分野は筋病理所見の特徴と筋炎自己抗体との関連についてであり、筋炎自己抗体陽性症例ごとに症例を分類し、その筋病理所見の特徴を明らかにすることを行ってきました。大学院での博士論文では「筋炎自己抗体および抗ミトコンドリア抗体を有する炎症性筋疾患の臨床、病理学的特徴に関する検討」をテーマとしました。各々筋炎のグループごと自己抗体ごとの筋病理所見が明らかになることで、将来的にはその背景にある病態機序解明を目指しています。

【今後の抱負】
炎症性筋疾患の病態機序には、筋線維、炎症細胞だけでなく、液性因子(サイトカインなど)、間質、血管内皮細胞などの様々な因子が関与していると考えられます。今後も炎症性筋疾患の症例を蓄積し、筋・筋膜組織での免疫組織学的検討、血清での活性物質や自己抗体の検討などを行っていきたいと考えています。また、日々の診療から得た様々なヒントを、炎症性筋疾患のみならず筋疾患全般の診断、臨床、治療、病態機序解明に役立てていきたいと考えています。

発表・論文

【研究業績】

Maeda MH, Ohta H, Izutsu K, Shimizu J, Uesaka Y. Sporadic late-onset nemaline myopathy as a rare cause of slowly progressive muscle weakness with young adult onset. Muscle & Nerve. 2015; 51: 772-4.

Maeda MH and Shimizu J. Anti-mitochondrial antibody: Potential marker of myositis with chronic clinical course, muscle atrophy, cardiac involvement and granulomatous inflammation in muscle biopsy. Clinical and Experimental Neuroimmunology. 2013; 4: 18.

Maeda MH, Tsuji S, Shimizu J. Inflammatory myopathies associated with anti-mitochondrial antibodies. Brain. 2012; 135: 1767-77.

Maeda MH, Mitsui J, Soong BW, Takahashi Y, Ishiura H, Hayashi S, et al. Increased gene dosage of myelin protein zero causes Charcot-Marie-Tooth disease. Annals of Neurology. 2012; 71: 84-92.

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