今月の研究者

三浦 裕司

三浦 裕司

研究キャリア
私は2002年に鹿児島大学を卒業後、臨床医として血液内科、腫瘍内科の臨床医としてトレーニングを積んできました。その間、研究に関しましては、臨床研究に関するトレーニングを受けておりましたが、実際に自分で行うのは自施設での後方視的研究のみで、多施設共同の前向き研究については、共同研究者として参加するだけでした。2010年に臨床腫瘍科の立ち上げメンバーとして高野利実先生と共に虎の門病院へ赴任した後は、多くの多施設共同前向き臨床試験に参加しながら、2011年から西日本がん研究機構(WJOG)で主任研究者として多施設共同前向き第II相試験を立案し、完遂するという貴重な体験を致しました(後に論文発表: Five-weekly S-1 plus displaying combination with trastuzumab in HER2-positive gastric cancer: A phase II trial and biomarker study (WJOG7212G). Gastric Cancer 2017;21:84-95)。虎の門病院に赴任後、自分自身の研究分野を泌尿器腫瘍(特に腎細胞がん)に絞り、研究を続けてきました。腎癌に対する、VEGFR阻害剤であるAxitinibの血中濃度と副作用、効果の関係をテーマに、慶應大学臨床薬剤学教室をはじめとして、全国7施設の泌尿器科と共同研究を立案し、初回投与時のAUCから推定した推奨用量へ投与調整することで、効果を最大化し、副作用を最小化する試みについて検討しました(Individualized dosing of axitinib based on the first-dose AUC in patients with metastatic renal cell carcinoma. Clin Genitourinary Cancer 2019;17(1):e1-e11)。また、虎の門病院泌尿器科 岡根谷利一先生、浦上慎司先生、病理部 井下尚子先生とは非常に魅力的な共同研究体制を取らせていただき、淡明細胞型腎細胞がんの発がんにおいて非常に重要な遺伝子変異であるBAP1, PBRM1遺伝子変異による同タンパクの欠損を免疫組織化学染色で評価し、そのパターンと予後の関連について研究を行いました (Loss of BAP1 protein expression in the first metastatic site predicts prognosis in patients with clear cell renal cell carcinoma. Urol Oncol. 2017;35:386-91, Prognostic value of BAP1 expression in clear cell carcinoma with inferior vena cava tumor thrombosis. Urol Oncol. 2018;36:365.e9-365.e14)。これらの研究を通して、私自身の興味は、徐々にしかし確実に、臨床研究から基礎研究もしくは基礎研究との橋渡し研究に変わって行きました。2016年から、共済医学会の海外留学制度を利用させていただき、米国テキサス州立大学 MDアンダーソンがんセンター 泌尿器腫瘍内科 免疫治療プラットフォームへ研究留学の機会をいただきました。これまでに基礎研究の基本的なトレーニングを受けたことがなかった中での、基礎研究のラボへの、ある意味無謀なチャレンジではありましたが、幸いラボのメンバーやメンターに恵まれ、基礎研究の厳しさ、面白さを学ぶことができました。研究テーマは、免疫チェックポイント阻害薬により生じる免疫介在性有害事象のひとつである肺臓炎のバイオマーカー探索でしたが、なかなか実験の結果が伴わず、半ば諦めかけていた時期もありました。幸い、最終的には興味深い知見に遭遇することができ、帰国後1年半程経過した2019年9月にやっと自分がメインで行った研究と、サブで関わっていた研究が、それぞれco-first author, co-authorとして、Proc Natl Acad SciとCellにアクセプトされました。また、私の論文のcorresponding authorは、私が所属したラボの施設長であり、2018年にノーベル生理学医学賞を受賞されたJames P. Allison先生が入ってくださり(残念ながら直接ご指導を受けることはできませんでしたが)、思いがけずラッキーでした。

今後の豊富
私は、これまでに様々な基礎研究者、そして米国ではphysician scientist達と出会いました。また、私自身は臨床医として患者さんと多く接し、臨床的な事象を多く経験しているという利点を持っております。これらの利点を活かし、今後は基礎研究者とコラボレーションしながら、臨床検体を使用したバイオマーカー研究に携わって行きたいと考えております。医学の医療と科学という2つの原点を忘れることなく、患者さんに還元できる新たな科学的知見を探求し続けたいと考えております。

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