今月の研究者

山内 真之

山内 真之

1) キャリア
私は、京都大学農学部在学中に高校のサッカー部の友人が悪性腫瘍で亡くなったことを契機に医師を目指すことにしました。幸い京都大学卒業と同時に京都府立医科大学医学部に入学することができ、2004年に同大学を卒業しました。その後、国立国際医療センターで内科研修、市立堺病院で主に総合内科と腎臓内科の研修を受けた後、2008年より虎の門病院腎センター内科のスタッフとして勤務し現在に至っております。
虎の門病院では指導医・同僚にも恵まれ、また症例も多く経験でき臨床面では何も不満はありませんでした。しかしながら、慢性腎臓病の診療・治療がここ20年程あまり進歩していないこともあり、ずっと診ていた患者さん達が透析導入になっていくのを指を咥えて見ているしかなく、この事実を何とかできないものかと思っておりました。特に糖尿病性腎症の患者さんの腎予後・生命予後は不良であり、少しでも何とかできないものかと模索しておりました。私には糖尿病性腎症の治療薬を創る能力はないですが、糖尿病性腎症の患者さんの腎予後・生命予後を早い段階で同定でき、早期に介入できれば予後を変えることができるのではないかと考えるようになりました。それには、疫学・統計学の知識の習得と腎予後を予測できるバイオマーカーの発見が必要ではないかと考えました。幸い、共済医学会より海外留学の機会を頂き、山口徹元病院長、大内尉義病院長、元腎センター内科部長でありました原茂子先生、腎センター内科で指導を受けております現副院長であります高市憲明先生、腎センター内科の乳原善文部長のお力添えで2013年から2015年の2年間米国マサチューセッツ州ボストンにあるハーバード大学に留学しました。学業と研究の両立は辛いものがありましたが、周囲の助けもありハーバード大学公衆衛生大学院を卒業し疫学の修士号(Master of Public Health)を取得し、一方、ハーバード大学附属ジョスリン糖尿病センター(Dr. Krolewski lab, Genetics & Epidemiology Section)では研究員として糖尿病性腎症のバイオマーカーの研究に励むことができました。

2) 研究分野
大学院で得た疫学・統計学の知識を元に虎の門病院の糖尿病性腎症のコホートを用いて疫学研究を始めております。また、日本医療研究開発機構(AMED)の和田班(班長:金沢大学腎臓内科 和田隆志教授)では『糖尿病性腎症の進展予防に向けた病期分類-病理-バイオマーカーを統合した診断方法の開発』のメンバーに入れていただき、糖尿病性腎症の疫学研究・病理・バイオマーカーの研究をしております。
また、冲中記念成人病研究所と虎の門病院では現在、糖尿病性腎症の患者さんの血清・尿・腎生検組織を用いて腎症進展バイオマーカーの検索を行っております。特に、尿細管マーカーと炎症マーカーが糖尿病性腎症の進展と関係があることをこれまでの研究で確認してきました。例えば、血漿Kidney Injury Molecule-1(KIM-1)という尿細管障害を示唆するバイオマーカーが糖尿病腎症の早期から上昇していればその後腎症が進展することを見出しました。急性腎障害時にKIM-1が近位尿細管に発現し組織の修復を促すと報告されておりましたが、慢性腎不全でどうなっているかはわかっておりませんでした。そこで、慢性腎不全の多くを占める糖尿病性腎症の患者さんで血中および尿中のKIM-1濃度を計測してみたところ、血漿中のKIM-1濃度が上昇していれば、その後腎症が進展していくことを発見し、KIM-1は急性腎障害のみならず慢性腎不全でも腎症のマーカーとなることを確認しました。
また、炎症マーカーである血清TNFR-1(腫瘍壊死因子受容体1)を用いて、糖尿病性腎症患者におけるランダム比較試験の効率を飛躍的に上げる方法を回帰木という統計手法を用いて開発しました。これまで糖尿病性腎症のバイオマーカーが数多く報告されておりますが、いずれのバイオマーカーも蛋白尿に劣るものでありましたが、血清TNFR-1は蛋白尿よりも優れた腎予後予測バイオマーカーであることを示しました 。

3) 今後の抱負、アピール
虎の門病院には先輩方が培ってこられた遺産があります。症例の蓄積があります。特に腎生検にて糖尿病性腎症と診断されたコホートは日本最大であり、世界でも有数のコホートであります。このコホートを用いて糖尿病性腎症の進展メカニズム、進展バイオマーカーの研究を行うことは我々の使命だと思っております。そして、その研究成果を世界に発信していきたいと思います。

4) その他
賞与:
2009年 腎臓学会優秀演題賞

発表・論文

業績

1. Yamanouchi M, Skupien J, Niewczas MA, Smiles AM, Doria A et al. Improved clinical trial enrollment criterion to identify patients with diabetes at risk of end-stage renal disease. Kidney Int 2017 Apr 7. in print.

2. Yamanouchi M, Ubara Y, Takayama T, Kuhara T, Takaichi K. Calcified nodules on fingers in primary hyperoxaluria type 2. Lancet Diabetes Endocrinol 2016;4(5):468.

3. Nowak N, Skupien J, Niewczas MA, Yamanouchi M, Major M et al. Increased plasma kidney injury molecule-1 suggests early progressive renal decline in non-proteinuric patients with type 1 diabetes. Kidney Int 2016 Feb;89(2):459-67.

4. Yamanouchi M, Ubara Y, Hayami N, Suwabe T, Hiramatsu R et al. Bone mineral density 5 years after parathyroidectomy in hemodialysis patients with secondary hyperparathyroidism. Clin Nephrol 2013;79(5):380-6.

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