今月の研究者

原 茂子

原 茂子

 名古屋大学医学部を卒業当時は、安保闘争など一連の流れのなかで、学内紛争(若い先生方々には通用しない、古のことば)でインターン制廃止に反対し、また医局に入らず、関連病院で自主的に企画して研修を行いましたが、不十分な状況でした。
 そのために1969年に虎の門病院レジデントとして臨床の道を選びました。1975年虎の門病院腎センター医員、1975年から76年にかけてUCLAのHarbor General Hospital Division of Nephrologyに留学。1986年腎センター医長、1994年血液浄化療法部部長、2000年からの腎センター内科部長を定年後には、2003年健康管理センター部長、2008年には健康管理センター・画像診断センター統括センター長を経て、2013年原プレスセンタークリニックを開業。この間、冲中財団研究員として、主として下記の研究分野を中心に、臨床研究にかかわっていました。
 現在研究員であるとともに、原プレスセンタークリニックにて、腎臓専門医として慢性腎臓病の悪化する因子は何か、いかに透析導入を回避しうるかに関して生涯現役として診療を通して臨床研究を継続しております。

腎センター内科では 糖尿病性腎症、膠原病による腎病変に関して、臨床面からまた病理組織学的な面から、厚生省(厚生労働省)研究班員として臨床研究を行っておりました。当時の糖尿病性腎症例の腎生検所見の解析結果が、現在若手腎センターの先生方により、CJASNなど多くの英文腎臓関連誌から発信がされております。さらに透析療法による合併症の病態、特にアミロイドーシスへの対策と治療に関して、厚生労働省アミロイドーシス研究班班員として臨床研究を報告しておりました。
健康管理センターでは、受診者20万人の疫学的な検討から、尿酸はメタボリック症候群、慢性腎臓病のpredictorであることなどを明らかにしております。また糖尿病例における腎症への進展因子として尿酸の意義も明らかにしております。

若い先生方へのメッセージですが今、私が若くて「何でもやっていいですよ」と言われれば、基礎を何年かやってみたいと思います。卒後マッチングで今は、臨床が優先されています。臨床をある期間するのはいいのですが、そこで基礎的な研究する機会を持つと、もっと広い視野で疾患の病態をみることができるのではないかと思います。
 もう1点は、私の時代に論文を英文化にしたものは、少ないのが残念です。若い先生方がインターナショナルに活躍して世界に発信していくことが大事ではないかと思っています。
 最後の点ですが、今、ガイドラインが独り歩きしているようで、非常に残念です。ガイドラインに書いてないから治療しない、ということではなくて、ガイドラインに呼応しない症例を、どう考えて、どう治療するかが極めて重要だと思います。もっと前向きに、治療にトライをして欲しいです。今は倫理委員会があって新しいことをするバリアになっているかもしれませんが、自由な発想を持って欲しいと思っています。ガイドラインは、多くの文献でエビデンスのあるものから作られていますが、臨床の現場から自分たちがガイドラインを作るのだと言った姿勢があって欲しいと思います。
 冲中重雄先生のモットーがあります。「書かれた医学は過去のものであって、目の前に悩む患者の中に明日の医学の教科書がある」と。フレキシブルな姿勢で臨床研究に取り組まれることを期待しています。

発表・論文

業績

Mise K, Ueno T, Hazue R, Hasegawa J, Sekine A, Sumida K, Hiramatsu R, Hasegawa E, Yamanouchi M, Hayami N, Suwabe T, Sawa N, Fujii T, Hara S, Ohashi K, Takaichi K, Ubara Y. Clin J Am Soc Nephrol.Prognostic Value of Tubulointerstitial Lesions, Urinary N-Acetyl-β-d-Glucosaminidase, and Urinary β2-Microglobulin in Patients with Type 2 Diabetes and Biopsy-Proven Diabetic Nephropathy. Clin J Am Soc Nephrol. 2016 Jan 22. pii: CJN.04980515. [Epub ahead of print]

Hoshino J, Mise K, Ueno T, Imafuku A, Kawada M, Sumida K, Hiramatsu R, Hasegawa E, Yamanouchi M , Hayami N, Suwabe T, Sawa N, Hara S, Fujii T, Ohashi K, Ubara Y, Takaichi K. A Pathological Scoring System to Predict Renal Outcome in Diabetic Nephropathy Am J Nephrol 2015; 41:337–344.

Hirakawa M, Arase Y, Amakawa K, Ohmoto-Sekine Y, Ishihara M, Shiba M, Ogawa K, Okuda C, Jinno T, Kato H, Tsuji H, Hashimoto M, Yamamoto T, Arimoto S, Hara S. Relationship between Alcohol Intake and Risk Factors for Metabolic Syndrome in Men.Intern Med. 2015; 54(17):2139-2145.

Mise K, Hoshino J, Ubara Y, Sumida K, Hiramatsu R, Hasegawa E, Masayuki Yamanouchi Y, Hayami N, Suwabe T, Sawa N, Fujii T, Ohashi K, Hara S and Takaichi K. Renal prognosis a long time after renal biopsyon patients with diabetic nephropathy Nephrol Dial Transplant (2014) 29: 109–118.

Tanaka K, Hara S, Hattori M, Sakai K, Onishi Y, Yoshida Y, Kawazu S, Kushiyama A. Role of elevated serum uric acid levels at the onset of overt nephropathy in the risk for renal function decline in patients with type 2 diabetes J Diabetes Invest 2015; 6: 98–104.

Hosoya T, Ohno I, Nomura S, Hisatome I, Uchida S, Fujimori S, Yamamoto T, Hara S. Effects of topiroxostat on the serum urate levels and urinary albumin excretion in hyperuricemic stage 3 chronic kidney disease patients with or without gout.Clin Exp Nephrol. 2014 Dec; 18(6):876-884.

Tanaka K, Hara S, Kushiyama A, Ubara Y, Yoshida Y, Mizuiri S, Aikawa A, Kawatzu S. Risk of macrovascular disease stratified by stage of chronic kidney disease in type 2 diabetic patients: critical level of the estimated glomerular filtration rate and the significance of hyperuricemia. Clin Exp Nephrol. 2011 Jun; 15(3):391-397.

Heianza Y, Hara S, Arase Y, Saito K, Fujiwara K, Tsuji H, Kodama S, Hsieh SD, Mori Y, Shimano H, Yamada N, Kosaka K, Sone H. HbA1c 5·7-6·4% and impaired fasting plasma glucose for diagnosis of prediabetes and risk of progression to diabetes in Japan (TOPICS 3): a longitudinal cohort study. Lancet. 2011 Jul 9; 378(9786):147-155.

Hara S, Tsuji H, Ohmoto Y, Amakawa K, Hsieh SD, Arase Y, Nakajima H. High serum uric acid level and low urine pH as predictors of metabolic syndrome: a retrospective cohort study in a Japanese urban population. Metabolism. 2012 Feb; 61(2):281-288.

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