今月の研究者

関根 章成

関根 章成

「キャリア」

私は2010年に山梨大学医学部を卒業後、当時第3内科教授をされていた小林哲郎先生(現冲中記念成人病研究所・所長)への憧れから志望した虎の門病院にて、前期研修2年・後期研修3年と内科を中心にとても充実した研修をさせて頂きました。5年間の研修を通してとても多くの症例を経験させて頂き、その中で「この症例は普通とちょっと違う」という症例を1例1例詳細に検討して学会発表・さらには論文作成することの意義を、特に当科の上司である乳原先生、高市先生、澤先生、星野先生から教えて頂きました。2015年4月からは、腎センター内科・リウマチ膠原病科の一員として働かせて頂き、1例1例の症例を大切にするなかで、浮かび上がってくるクリニカルクエスチョンを臨床研究という形で少しでも解決していきたいと考え、悪戦苦闘しながら少しずつ実践しております。
腎臓領域の多発性嚢胞腎という疾患に関しては、厚生労働省研究班に所属させて頂き、全国的な調査研究、診療ガイドラインの作成などに携わらせて頂いております。
資格としては、総合内科専門医、腎臓内科専門医・指導医、透析専門医、リウマチ専門医・指導医を取得し、現在は、臨床遺伝専門医を取得すべく研修中です。

「研究分野」

腎臓・リウマチ膠原病領域で幅広く興味を持っておりますが、特に多発性嚢胞腎のような遺伝性腎疾患、ループス腎炎のような膠原病に伴う腎障害、がん診療に伴う腎障害(OncoNephrology)が主な研究分野です。その中で今回は多発性嚢胞腎に関して書かせて頂きます。
腎臓に嚢胞をつくる病気は数多くありますがその中で一番多いのが常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)であり、唯一進行を抑制する治療薬(トルバプタン)が保険承認されている疾患でもあります。遺伝性の疾患でありますが、現行の診断基準に遺伝学的検査は組み込まれていないため(一般的に少しずつ遺伝学的検査が施行されるようになりましたが、現在は非保険診療です)、家族歴の明らかでない嚢胞腎患者では診断・治療において困ることが多くあります。そこで、虎の門病院院内倫理委員会承認のもと東京医科歯科大学の腎臓内科(内田教授・蘇原准教授・森先生・藤丸先生ら)と共同研究をさせて頂き、診断・治療に難渋する嚢胞腎患者の遺伝学的検査を100人以上施行頂いております(現在も進行中です)。そのなかで、嚢胞腎患者の遺伝学的背景と病気進行/腎予後との関係性(Am J Nephrol, 49(3): 233-40, 2019)とADPKD患者の遺伝学的背景とトルバプタン治療有効性の関係(Am J Nephrol, 51(9): 745-51, 2020)を論文化させて頂きました。ADPKDでは、肝嚢胞、脳動脈瘤、心臓弁膜症(特に僧帽弁閉鎖不全症)、大腸憩室などの合併症が知られていますが、ADPKDの遺伝学的背景とこれら合併症との関係についても調査中であり近々報告させていただけると思います。

「今後の抱負」

ADPKDのみならず多くの遺伝性疾患において、通常診療のなかで遺伝学的検査が行われるようになってきています。腎臓専門医・リウマチ専門医としてのみではなく、臨床遺伝専門医としても遺伝性疾患の診療に積極的に携わるなかで、浮かび上がってくる新たなクリニカルクエスチョンを臨床研究という形で実践していきたいと思います。より一層冲中成人病研究所の発展に貢献させて頂きたいです。

発表・論文

「論文 (First, Corresponding Authorのみ)」

1. Sekine A, Hoshino J, Fujimaru T*, Suwabe T, Mizuno H, Kawada M, Sumida K, Hiramatsu R, Hasegawa E, Yamanouchi M, Hayami N, Mandai S*, Chiga M*, Kikuchi H*, Ando F*, Mori T*, Sohara E*, Uchida S*, Sawa N, Takaichi K, Ubara Y. (Toranomon Hospital, * Tokyo Medical and Dental University). Genetics may predict effectiveness of tolvaptan in autosomal dominant polycystic kidney disease. Am J Nephrol,51(9): 745-751, 2020.

2. 関根章成、星野純一: IgA腎症(成人):予後からみた臨床・病理学的分類と治療原則、 腎疾患・透析 最新の治療 2020-2022、南江堂、103-6、2020

3. 関根章成、乳原善文: 多発性嚢胞腎、新臨床内科学 第10版、医学書院、1222-4、2020

4. 関根章成、髙市憲明: 臨床とCl⁻ 嘔吐/下痢によるアルカローシス/アシドーシス、腎と透析、東京医学社、405-9、2020

5. 関根章成: 常染色体劣性多発性嚢胞腎(autosomal recessive polycystic kidney disease; ARPKD)、腎臓内科、科学評論社、517-24、2020

6. Sekine A, Fujimaru T*, Hoshino J, Suwabe T, Oguro M, Mizuno H, Kawada M, Sumida K, Hiramatsu R, Hasegawa E, Yamanouchi M, Hayami N, Mandai S*, Chiga M*, Kikuchi H*, Ando F*, Mori T*, Sohara E*, Uchida S*, Sawa N, Takaichi K, Ubara Y. (Toranomon Hospital, * Tokyo Medical and Dental University). Genotype-Clinical Correlations in Polycystic Kidney Disease with No Apparent Family History. Am J Nephrol, 49(3): 233-240, 2019.

7. Sakoh T, Sekine A, Mori T*, Mizuno H, Kawada M, Sumida K, Hiramatsu R, Hasegawa E, Hayami N, Yamanouchi M, Suwabe T, Sawa N, Ubara Y, Fujimaru T*, Sohara E*, Uchida S*, Hoshino J, Takaichi K. (Toranomon Hospital, * Tokyo Medical and Dental University). A familial case of pseudohypoaldosteronism type 2(PHA2) with a novel mutation (D564N) in the acidic motif in WNK4. Mol Genet Genomin Med, Jun; 7(6): e705, doi: 10. 1002/mgg3.705, 2019.

8. 関根章成、星野純一:多発性嚢胞腎up-to-date、循環器内科、科学評論社、85(1): P40-45、2019

9. 関根章成、乳原善文:血栓性微小血管症(TMA)、 1361専門家による私の治療 2019-20年度版、日本医事新報社、 7-24、2019

10. 関根章成、高市憲明:ミオグロビン、腎と透析 ベッドサイド検査辞典、腎と透析 Vol 84 増刊号、東京医学社 P94-95、2018

11. 関根章成、星野純一:手根管症候群って何?なぜ起こるの?、透析ケア、メディカ出版、5: P42、2018

12. 関根章成、星野純一:血液疾患とAKI、AKI治療の実際、日本医事新報社 : P112-115、2018

13. Ito Y, Sekine A, Takada D, Yabuuchi J, Kogure Y, Ueno T, Sumida K, Yamanouchi M, Hayami N, Suwabe T, Hoshino J, Sawa N, Takaichi K, Kinowaki K, Fujii T, Ohashi K, Kikuchi H, Mandai S, Chiga M, Mori T, Sohara E, Uchida S, Ubara Y. (Toranomon Hospital, * Tokyo Medical and Dental University). Renal histology and MRI findings in a 37-year-old Japanese patient with autosomal recessive polycystic kidney disease. Clinical Nephrology, Nov; 88(11): 292-297, 2017.

14. Takada D, Sekine A, Yabuuchi J, Kogure Y, Ueno T, Yamanouchi M, Sumida K, Suwabe T, Hayami N, Hoshino J, Takaichi K, Kinowaki K, Fujii T, Ohashi K, Mori T, Sohara E, Uchida S, Ubara Y. (Toranomon Hospital, * Tokyo Medical and Dental University). Renal histology and MRI in a 25-year-old Japanese man with nephronophthisis 4. Clinical Nephrology, Nov; 22[Epub ahead of print], 2017.

15. Takada D, Sumida K, Sekine A, Hazue R, Yamanouchi M, Suwabe T, Hayami N, Hoshino J, Sawa N, Takaichi K, Fujii T, Ohashi K, Ubara Y. IgA nephropathy featuring massive wire loop-like deposits in two patients with

alcoholic cirrhosis. BMC Nephrology, Dec 13; 18(1): 362, 2017.

16. 関根章成、乳原善文:血栓性微小血管症(TMA)、1336専門家による私の治療 2017-2018年度版、日本医事新報社、7: P539-540、2017

17. 関根章成、乳原善文:多発性嚢胞腎、透析患者診療に役立つ診断と重症度判定のためのアプローチ、第1版、加藤明彦、小松康宏、中山昌明、日本メディカルセンター、東京、167-168、2016

18. 関根章成、星野純一:末期腎不全患者(透析・移植)、臨床雑誌内科(症例から学ぶ内科疾患の診断・治療のピットフォール)、南江堂、117(4)726-732, 2016

19. Sekine A, Hasegawa E, Hiramatsu R, Mise K, Sumida K, Ueno T, Yamanouchi M, Hayami N, Suwabe T, Hoshino J, Sawa N, Takaichi K, Ohashi K, Fujii T, Ubara Y:Two Types of Renovascular Lesions in Lupus Nephritis with Clinical Thrombotic Thrombocytopenic Purpura.Case Rep in Nephrol Dial, 5: 192-199, 2015.

20. Sekine A, Tsunao I, Tetsuo T, Yuko K, Rikako K, Masamichi M, Kazuo T. A case of intraductal papillary mucinous neoplasm with pancreatic lithiasis which developed over a short period of time. Progress of Digestive Endoscopy Vol 83, No.1; 210-211, 2013.

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