戸田　晶子

1) 経歴
1994年に新潟大学を卒業し、東大病院腎臓内科入局後1997年に６ヶ月間虎の門病院腎センターで研修させていただきました。分院透析室の、見渡す限りの透析ベッドの多さに驚いた記憶があります。半年間と短い期間ではありましたが、当時腎センター部長の原茂子先生のご指導の元に透析患者さんの症例報告を大阪の研究会で発表、和文誌「集中治療」に発表しました。この時に自分の経験を単なる経験に終わらせるだけではなく、文章にすることでその経験が自分の中でも深まること、また共有することの大切さを教えていただきました。
　その後、元々研究をすることへの希望もあり、東京大学大学院へ進み、所属は腎臓内科でしたが、第二生化学教室の清水孝雄先生、横溝岳彦先生の元でロイコトリエンB４受容体をテーマに大学院、ポスドク含めて8年間基礎研究、その後カナダMcGill大学免疫学教室に1年留学しました。帰国後の2007年に三井記念病院の総合健診センターで人間ドックに従事することを選びました。予防医学に従事するにあたっては、将来の病気予防に関われる点と、疫学研究という研究が継続できるという点が私にとっては魅力的でした。その後2017年に現在の虎の門病院健康管理センターに入職致しました。その際には、20年の年月を経て人間ドック学会で再会した原茂子先生にご尽力頂きました。

２）研究分野
　現在は年間ドック受診者18,000人のデータを用いた疫学研究を行っています。当院人間ドックは経年受診者が多いので縦断研究も可能であり、年々積み上がっていくデータを無駄にすることなく役立てていきたいと思っています。私は腎臓内科出身ですので腎機能障害、特にアルブミン尿に注目して研究を行っています。尿中アルブミン濃度は、糖尿病患者さん以外には保険診療項目対象外ですが、自費診療であるドックでは早期腎障害の発見、動脈硬化の指標として全検体で測定しているため、当院施設ならではの研究ができる点が利点です。研究テーマについては、日々の業務で疑問に思ったことを取り上げるようにしています。例えば、一般に肥満者に対しては減量を指導しますが、「データ異常が認められない肥満者、いわゆる健康肥満の方も減量が必要なのか？」を疑問として、腎機能障害の面から縦断研究を行いました。
　また現在では日本人間ドック学会誌の編集委員として、投稿論文の査読等を
行っていますが、投稿者の論文を客観的に読むことから学ぶことも多く、楽しく仕事をさせていただいています。

３）抱負
　虎の門病院は臨床研究を推奨する風土があり、研究を行うにあたって恵まれている環境だと感じています。今後も日々の臨床業務での疑問や気づきを大切に、予防医学にわずかながら貢献できるように精進していきたいと思っております。