1) キャリア
私は1998年に筑波大学医学専門学群を卒業し、同大学脳神経外科に入局しました。その後は茨城県内の病院で脳神経外科一般臨床を学び、2004年に脳神経外科専門医、翌2005年には脳神経血管内治療専門医を取得しました。2009-12年には虎の門病院脳神経血管内治療科で松丸前部長の下で働かせて頂き、脳神経血管内治療指導医を取得。その後筑波大学に戻って、脳卒中予防・治療学准教授として、茨城県の脳卒中連携システム推進事業に携わらせて頂きました。2015年にはフランスのHopital FOCHにての神経放射線の大家であるGeorges Rodesch先生に師事し、シャント疾患に対する脳血管内治療の研修をさせて頂きました。2016年11月から現職である虎の門病院脳神経血管内治療科部長、冲中記念成人病研究所研究員として働かせて頂いております。
2)研究分野
私の大学院の研究テーマは血管形成術後際狭窄予防に関する基礎研究でした。
血管内治療の分野では、血管の狭窄病変に対してバルーンやステントによる血管形成術を行います。しかしながら血管拡張後に再狭窄が起こることがしばしばあり、私の大学院時代、脳血管領域のみならず循環器の冠動脈領域においてもこの再狭窄が問題となっておりました。狭窄を予防するため、抗がん剤や免疫抑制剤をステントに塗ったドラッグエリューティングステントが開発されておりましたが、留置後は長期間ステント内腔の内膜形成が不良となるため、慢性期血栓性閉塞が問題となっていました。また血栓性閉塞予防のための抗血小板薬長期投与は、出血性合併症のリスクにもなりました。私はリポソームを用いたTargeting chemotherapyで、経静脈的に投与した薬剤を、再狭窄部位に選択的に届けるシステムを新規に考案しました。この手法を用いれば、再狭窄が起こってきた症例に対して、経静脈的薬剤投与が可能になります。このシステムでは白血球が炎症部位に集簇する時のE-selectinとSialyl Lewis X(SLX)の親和性を利用しています。E-selectinは血管内皮の炎症部分に発現するレクチン蛋白、SLXは白血球表面に発現している糖鎖です。この糖鎖SLXをリポソームに標識し、内部に抗がん剤を封入したDoxorubicin liposome SLXを作成し、ラット頸動脈狭窄モデルに投与して狭窄予防の有効性を立証しました。
基盤研究(C) 2013-15年 研究代表者
頭頚部血管形成術後再狭窄に対するナノ粒子を用いた診断・治療についての基礎的研究
虎の門病院赴任後は画像診断を中心とした臨床でのテーマを中心に研究を行っております。
● 脳血管内治療における患者および術者の被ばく低減に関する研究
● 硬膜動静脈瘻における閉塞静脈洞内血栓評価に関する研究
● 頚動脈ステント留置術の安全性向上に関する研究
● 頭蓋内ステント留置後の内膜形成評価法に関する研究
3) 今後の抱負、アピール
今後も日々の臨床の中で生まれる疑問、課題を大切にし、脳血管内治療の進歩に貢献していけるよう努力していく所存であります。