今月の研究者

富田 康弘

富田 康弘

1)キャリア
2007年東京大学医学部卒業後,虎の門病院で内科研修を行いました。循環器内科と呼吸器内科を中心にローテートした後期研修の中で,当時の睡眠呼吸器科部長であった成井浩司医師および神経生理科長であった川名ふさ江技師の元で睡眠時無呼吸を中心とした睡眠医学を学びました。
2012年より循環器センター内科医員となった後も,睡眠センターの外来診療,臨床研究に携わりました。2014年に睡眠学会専門医,2015年に循環器専門医を取得し,臨床医として睡眠センターおよび循環器センターの診療をつなぐ役割を担ってまいりました。
2015年より社会人大学院生として順天堂大学大学院医学研究科(心血管睡眠呼吸医学講座)に所属し,とくに循環器疾患患者を対象とした睡眠呼吸障害について臨床・研究の両面で多くのことを学びました。
2019年より睡眠呼吸器科に軸足を移して,睡眠時無呼吸のみならず睡眠医学全般に視野を広げて活動しております。2020年より基礎睡眠科学の研究に取り組む東京大学大学院医学系研究科(システムズ薬理学)にも籍を置き,臨床睡眠医学との融合を図り,社会実装を視野に入れた研究も手掛けていきたいと考えています。
国際標準の睡眠医学を日本にも広めるべく,2021年に米国BRPT認定睡眠検査技師(RPSGT)資格を取得し,睡眠検査技師の後進育成にも尽力したいと考えています。2022年現在,日本内科学会総合内科専門医・指導医,日本循環器学会認定循環器専門医・指導医,日本睡眠学会専門医・評議員などを務めております。

2)研究分野
循環器疾患(虚血性心疾患,心房細動,心不全など)に合併する睡眠呼吸障害を対象として,院内単独,国内多施設,国際多施設などさまざまな規模の研究に関わってきました。睡眠呼吸障害は心血管予後に関わるという点が注目されており,臨床現場に直結する成果が明らかになっています。この分野は今後も私の中心的研究課題であり,臨床上のライフワークでもあると考えています。
睡眠時無呼吸の中心的治療方法である持続陽圧呼吸(CPAP)療法に用いるCPAP機器からは,日々多くのデータが収集されています。遠隔モニタリングが標準化されてから,膨大なデータを研究利用する可能性が見出され,日本国内で多施設研究が開始されています。CPAP療法においては,薬物療法以上に治療のアドヒアランスが問題となっており,行動変容につながる介入についてもICTの利活用場面があります。臨床の現場においても遠隔医療に積極的に関わっており,通信技術を活用した診療の意義を実証していくことも,重要な研究課題と位置付けています。
睡眠医療全般に視野を広げると,睡眠に注目して技術開発を行っている企業(スリープテック)の参入が始まっており,早期診断に結びつく診断技術として期待されています。睡眠医療の現場に有意義な還元が可能となるよう,診断技術開発に関わる研究協力をしております。睡眠医療という分野の社会的な側面を考えると,スリープテック以外にもさまざまな業界との融合が考えられます。臨床医の視点から科学的な裏付けのための研究という形で,社会実装に向けた取り組みに参画できる道を日々考えています。

3)今後の豊富
CPAP療法はすでに一般的な治療となっており,心血管合併症との連関についても多くのことが明らかになっています。今後の臨床的な課題は,治療のアドヒアランスを向上させることや,未診断の患者さんへのアプローチに重点が置かれています。
人々の行動変容を促すためには,睡眠に関する正しい知識を啓蒙することに加えて,遠隔医療や科学技術を利用した介入が有用であると考えています。こういった取り組みが社会実装,臨床応用される未来を視野に入れ,検証可能な形で発展させるための臨床研究に力を注ぎたいと考えております。

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